デジタルピアノの最大の課題は、「その感触をいかにして本物のピアノに近づけるか」にあると言ってよいでしょう。デジタルピアノと生のピアノとでは、鍵盤の単純な軽重から押し込んだ時の感覚、強弱をつけて弾いた際に指で感じる抵抗感、打鍵後の鍵盤戻りの早さなど、多くの部分に違いが存在します。

電子楽器である以上アコースティックピアノとの間には大きな隔たりがありますが、各社研究を積み重ねた独自技術によりその差を埋めようとしています。

ここでは弊ショップで販売しているKAWAIのデジタルピアノについて、それぞれに施されているタッチの工夫を説明いたします。ページの最後には、タッチで選ぶ際におすすめの機種を紹介しております。お忙しい方は、ページ最後の部分だけでも、ぜひご覧くださいませ。

タッチに関わる重要な部分

ここではまず、より本物のタッチに近づけるための数々の工夫を紹介いたします。
※モデルによっては一部にしか搭載されていない、または搭載されていないものもございます。各モデルの詳細については後の「鍵盤アクション」の項をご参照ください。

鍵盤

弾く人の指に直接触れる鍵盤は、タッチ感を左右する大きな要素になります。そのため、タッチを重視する場合には鍵盤の軽重に関わる鍵盤自体の材質や表面の材質はとても重要です。

KAWAIデジタルピアノの鍵盤には木製と樹脂製の2種類のものがあります。

・木製鍵盤
鍵盤に木材を使用することで、アコースティックピアノと同様の鍵盤重量、タッチ感を再現しています。また、KAWAI独自の加工技術によって作られた積層材を使用することで、反りや捩じれが少ない高い精密性を実現しています。CAシリーズに使用されている鍵盤は88鍵全てが木製です。

・樹脂製鍵盤
低~中価格帯の電子ピアノには樹脂製鍵盤が用いられています。しかし樹脂製であるからと言って、鍵盤が特別軽いという訳ではありません。鍵盤ウェイトと呼ばれる錘を鍵盤内部に搭載することにより、グランドピアノに近い重量感とコントロール性を再現しています。


また鍵盤の表面にも工夫が施されています。その昔、高級ピアノの鍵盤に象牙や黒檀が使用されていたことをご存じの方は多いかもしれません。象牙や黒檀は適度に指に吸着し、なおかつ長時間演奏していても汗で滑りにくく、指触りがよいという特性があります。現在では生物保護等の観点からこれらの素材が使用されることはほとんどありませんが、良い素材であることは事実です。現在では多くのメーカーがアコースティックピアノの鍵盤材料として、人工象牙や人工黒檀を用いています。

そこでKAWAIでは、アコースティックピアノのみならず、一部モデルの電子ピアノの鍵盤にも象牙や黒檀の色合いや風合いを模した材料を使用しています。象牙調白鍵(アイボリータッチ)、黒檀調黒鍵(エボニータッチ)により、よりリアルなタッチ感を実現しているのです。

構造

電子ピアノと言えども、タッチ感に大きな影響を及ぼす鍵盤構造にも多くの工夫が施されています。一般的に電子ピアノというと、キーボードのような簡単な構造のピアノを思い浮かべる方が多いかもしれません。ところが、KAWAIの電子ピアノにはグランドピアノと同じ構造が用いられているものもあるのです。

・シーソー構造
木製鍵盤モデルには、グランドピアノと同様のシーソー構造が採用されています。鍵盤を押すことでハンマーが上がり、弦をたたいて音を鳴らすという基本の発音構造を忠実に再現することによって、従来の簡単な構造の物よりも、はるかに本物に近いタッチ感を得ることができます。またKAWAIの電子ピアノは長い支点距離の確保に成功しており、電子ピアノながら高いコントロール性を実現しています。

感触/タッチ

実際に鍵盤を叩いた際の感触においても、本物と同様の感覚が得られるように多くの工夫が込められています。ここでは特徴的な3つの工夫について説明します。

・レットオフ・フィール
グランドピアノの鍵盤をゆっくりと押すと、カコッとした独特のクリック感があることをご存じですか?これはピアノの内部でジャックと呼ばれる部品がハンマーを押し上げた際に感じるものです。KAWAI電子ピアノの大部分のモデルでは、このグランドピアノ特有のクリック感を再現するレットオフ・フィール機能を搭載することで、よりリアルなタッチ、弱打時のコントロール性向上を実現し、流れるような演奏を可能にしています。

・音域別ハンマーウェイト/カウンターウェイト
グランドピアノの鍵盤を弱く押したときの手応えは一定ですが、強打したときのタッチは実は一定ではありません。低音域では手応えが大きく、高音域では手応えが小さいことが一般的です。そこでKAWAIでは、ハンマーを模したハンマーウェイトや、カウンターウェイトと呼ばれる錘を搭載することで、強弱をつけて弾いた際のタッチの違いを再現しています。さらに、ハンマーウェイトにおいては、白鍵・黒鍵ともに音域別に作られた4段階の錘を使用することで、強打時の手応えの違いをより忠実に再現しているのです。

・高精度センサー
電子ピアノにおいて音を鳴らす一番重要な部分はセンサーです。KAWAIでは、鍵盤1つにつき3つのセンサーによって打鍵と離鍵を高精度で検出するシステムを採用しています。これにより演奏者の打鍵に繊細に反応し、グランドピアノのような豊かな演奏表現を可能にしています。またレットオフポイントからの発音にも対応しているため、鍵盤を戻し切らずに次の音を鳴らすことができ、グランドピアノのような同音連打・トリルも可能です。

鍵盤アクション

ここでは、KAWAIの電子ピアノに搭載されている鍵盤アクションを4つ、それぞれの特徴と機能と共に紹介いたします。

Grand Feel Action Ⅲ

搭載機種:CA701/CA901

1.88鍵全て木製

2.象牙調白鍵/黒檀調黒鍵採用

3.長い支点距離を持つシーソー構造

4.音域別ハンマーウェイト搭載

5.88鍵全てにカウンターウェイト搭載

6.レットオフ・フィール搭載

7.高精度センサー搭載

8.真鍮製フロントピン/バランスピン

9.4層構造のハンマークッション

10.耐久性の高い特殊樹脂ブッシュ

グランド・フィール・アクションⅢは、KAWAI最高峰の木製鍵盤アクションです。88鍵すべて木製の鍵盤を使用、またハンマーを跳ね上げるシーソー式の構造や電子ピアノ最長クラスの支点距離、鍵盤をゆっくりと押さえたときに感じるクリック感など、細部に至るまでグランドピアノに限りなく近い鍵盤設計が追求されています。

Grand Feel Standard Action

搭載機種:CA401/CA501

1.88鍵全て木製

2.象牙調白鍵採用

3.シーソー構造採用

4.音域別ハンマーウェイト搭載

5.低音32鍵にカウンターウェイト搭載

6.レットオフ・フィール搭載

7.高精度センサー搭載

8.真鍮製フロントピン/バランスピン

9.耐久性の高い特殊樹脂ブッシュ

鍵盤を押すことで、ハンマーが上がり弦を叩くというグランドピアノの発音構造を忠実に再現。鍵盤がしなり、跳ね上がったハンマーがセンサーを弾くというピアノ本来の構造そのままに演奏することが可能です。

Responsive Hammer Action Ⅲ

搭載機種:CN201/CN301/ES920

1.樹脂製鍵盤

2.象牙調白鍵採用

3.鍵盤ウェイト搭載

4.音域別ハンマーウェイト搭載

5.レットオフ・フィール搭載

6.高精度センサー搭載

7.静音構造

吸収力の高い低反発クッションをアクション各部に配置する、カワイ独自の静音構造により、鍵盤自体のカタカタ音を抑制。ピアノ音がよりきれいに響くため、周囲に気兼ねすることなく、気持ちよく練習することが可能です。

Responsive Hammer Action Standard

搭載機種:ES120 Filo

1.樹脂製鍵盤

2.ハンマーウェイト搭載

レスポンシブ・ハンマー・アクション・スタンダード鍵盤は、本格的な鍵盤タッチでありながらポータブル電子ピアノに最適化した、軽量でコンパクトな鍵盤機構です。

タッチから選ぶおすすめのデジタルピアノ

タッチを重視する場合、本物に近い感覚で演奏ができる木製鍵盤モデルをおすすめいたします。

特に、ピアノ教室でピアノを習われている方、またアコースティックのピアノに買い替える可能性がある方には以下のモデルがおすすめです。電子ピアノの段階から本物に近いタッチの物を使用することで、ピアノ教室で使用されているピアノ、また将来購入するかもしれないピアノとのギャップを埋めることができます。